知っておきたいレーザー治療の限界

知っておきたいレーザー治療の限界

低出力レーザー治療(LLLT)は、痛みや副作用が少ない点からAGA治療の新たな選択肢として注目されていますが、万能ではありません。治療を検討する際は、その効果の限界や注意点もしっかり理解することが大切です。まず、最も重要な限界として、「効果の現れ方には大きな個人差がある」という点が挙げられます。LLLTは、毛根細胞の活性化や血行促進などを通じて発毛をサポートしますが、その反応性は人によって異なります。治療を継続しても、期待したほどの効果(発毛や毛量増加)が得られない可能性も十分にあります。特に、AGAがかなり進行し、毛包の機能が著しく低下してしまっている場合には、レーザー照射だけでは十分な改善が難しいと考えられます。次に、「効果を実感するまでに時間がかかる」という点です。LLLTは、ヘアサイクルに働きかけ、徐々に髪の成長環境を整えていく治療法です。そのため、薬物療法と同様に、効果が現れ始めるまでには最低でも3ヶ月から6ヶ月程度の継続的な照射が必要とされています。即効性を期待することはできません。根気強く続けることが求められます。また、「AGAの根本原因(DHT)を直接抑制するわけではない」という点も理解しておくべきです。LLLTは毛根の活性化を促しますが、AGAの進行を引き起こすDHTの生成や働きを直接ブロックするわけではありません。そのため、AGAの進行を根本から食い止めたい場合には、DHTを抑制する内服薬(フィナステリド、デュタステリド)との併用が、より効果的であると考えられています。レーザー治療単独では、進行抑制効果は限定的かもしれません。「科学的根拠(エビデンス)レベル」についても、まだ議論の余地があります。一部の機器についてはFDA(米国食品医薬品局)の承認を得ていますが、その有効性については、薬物療法ほど大規模で質の高い臨床試験データが蓄積されているとは言えません。治療法や機器によっては、効果に関するエビデンスが不十分な場合もあります。さらに、「費用」の問題もあります。クリニックでの照射も、自宅用デバイスの購入も、ある程度の費用がかかります。特に自宅用デバイスは初期投資が大きくなります。これらの限界点を理解した上で、レーザー治療が自分にとって最適な選択肢なのか、他の治療法(薬物療法、植毛など)と比較検討し、医師と十分に相談して決定することが重要です。