AGAメカニズムを踏まえた治療法

AGAメカニズムを踏まえた治療法

AGA(男性型脱毛症)のメカニズム、すなわち「遺伝的要因」と「男性ホルモン(DHT)の影響」による「ヘアサイクルの乱れ」を理解すると、現在行われている主なAGA治療法が、どのようにそのメカニズムにアプローチしているのかが見えてきます。治療法の原理を知ることで、なぜその治療が必要なのか、どのような効果が期待できるのかをより深く理解できます。現在のAGA治療の主流は「薬物療法」であり、主に二つのアプローチがあります。一つ目は、「DHTの生成を抑制する」アプローチです。AGAの根本原因であるDHTが作られなければ、毛根への攻撃も起こらず、ヘアサイクルの乱れも改善されます。この働きを持つのが、「5αリダクターゼ阻害薬」である「フィナステリド」と「デュタステリド」です。これらの内服薬は、テストステロンをDHTに変換する酵素(5αリダクターゼ)の働きを阻害することで、体内のDHT濃度を低下させ、AGAの進行を抑制します。これは、AGAのメカニズムの根幹に作用する、非常に重要な治療法です。二つ目は、「毛根(毛包)を直接活性化させる」アプローチです。DHTの影響で弱ってしまった毛母細胞の働きを高め、ヘアサイクルにおける成長期を延長させ、発毛を促進することを目指します。この働きを持つ代表的な成分が「ミノキシジル」です。ミノキシジル外用薬(塗り薬)は、頭皮の血行を促進し、毛母細胞に直接作用してその増殖や活性化を促すと考えられています。これにより、細くなった髪を太く育て、新たな髪の成長をサポートします。多くの場合、これらの異なるアプローチを組み合わせる「併用療法」が推奨されます。つまり、内服薬でDHTの生成を抑えて進行を食い止め(守り)、同時にミノキシジル外用薬で発毛を促す(攻め)、という戦略です。これにより、より高い治療効果が期待できます。これらの薬物療法以外にも、頭皮に成長因子などを注入する「メソセラピー」や、後頭部の毛髪を移植する「自毛植毛」などがありますが、これらもAGAのメカニズム(毛根の機能低下や消失)を踏まえた上で、それを補ったり、代替したりする方法と言えます。AGAのメカニズムを理解することは、自分に合った治療法を選択し、納得して治療を継続していく上で、非常に役立つのです。