プロペシアと同じ有効成分フィナステリドを含み、世界中で多くのAGAに悩む人々に使用されているフィンペシア。その価格の安さは大きな魅力ですが、なぜこの薬は、日本では医薬品として承認されていないのでしょうか。そこには、「海外で使われているから安全」という単純な理屈では片付けられない、国の医薬品承認プロセスにおける、国民の安全を守るための厳格な理由が存在します。第一に、医薬品が日本国内で承認されるためには、その「有効性」と「安全性」を証明する、膨大で質の高いデータが必要です。これには、薬の製造工程や品質管理体制が日本の基準をクリアしていることを示す資料や、日本人を対象とした臨床試験(治験)のデータなどが含まれます。フィンペシアを製造する海外のジェネリックメーカーが、日本の市場のためだけに、この多大なコストと時間を要する承認申請プロセスを経ることは、現実的には非常に稀です。つまり、フィンペシアは、日本の規制当局であるPMDA(医薬品医療機器総合機構)による、有効性と安全性の厳しい審査を受けていない、という事実があります。第二に、「添加物」の問題です。薬は、有効成分のほかに、錠剤を成形したり、コーティングしたりするための添加物から構成されています。使用できる添加物の種類や基準は、国によって異なります。過去にフィンペシアのコーティング剤として使用されていた着色料「キノリンイエロー」は、その一例です。この成分は、アレルギー反応や発がん性の疑いから、日本では医薬品や食品への使用が認められていません。たとえ現在は使用されていないロットの製品が流通しているとしても、個人輸入ではどの製品が届くか分からず、日本の安全基準を満たさないものが含まれている可能性を、完全に排除することはできないのです。そして第三に、そして最も大きな理由として、「国内に安全な代替薬が存在する」ことが挙げられます。プロペシアの特許が切れた後、日本の多くの大手製薬会社が、厚生労働省の承認を受けた正規のフィナステリドジェネリック医薬品を製造・販売しています。国としては、安全性と品質が完全に担保されたこれらの「国内承認ジェネリック薬」の使用を推奨するのは、国民の健康を守る上で当然の責務です。フィンペシアが国内で未承認であることには、こうした明確な理由があるのです。