フィナステリドの服用において、「薬を飲まない日がある」という点では同じに見える、「飲み忘れ」と「休薬」。しかし、この二つは、その意味合いも、体に与える影響も、全く異なる、似て非なるものです。この違いを理解せず、自己判断で「休薬期間」を設けることは、AGA治療において最も危険な行為の一つと言っても過言ではありません。まず、「飲み忘れ」とは、本来服用すべき日に、意図せず服用ができなかった「失敗」です。これにより、血中の薬物濃度が低下し、AGAの原因物質であるDHTが再び生成され、治療効果が不安定になります。これは、治療計画における予期せぬ「エラー」であり、可能な限り避けるべき事態です。一方、「休薬」とは、医師が医学的な判断に基づき、計画的に、そして意図的に薬の服用を一時的に中断する「治療戦略」の一つです。例えば、副作用が発現した際に、その原因がフィナステリドによるものかどうかを判断するため、あるいは、肝機能の数値に異常が見られた際に、肝臓を休ませて回復を促すため、といった目的で行われます。この場合、医師は休薬期間中のリスクを十分に考慮し、患者さんの状態を注意深くモニタリングしながら、治療を管理します。そして、休薬期間が終われば、再び適切なタイミングで服用を再開するよう指示します。問題は、患者さんが自己判断で「休薬」を真似てしまうことです。「最近、効果も安定してきたし、肝臓を休ませるために、週に2日くらい休薬日を設けてみようか」「副作用が心配だから、体調が良い時だけ飲もう」。こうした考えは、非常に危険です。医師の管理下にない自己流の休薬は、単なる「計画的な飲み忘れ」でしかありません。それは、DHTの生成を定期的に許可してしまう行為であり、薄毛の進行を食い止めるという、フィナステリド本来の目的を根底から覆すものです。せっかく安定していた治療効果は失われ、髪の状態は再び後退していく可能性が極めて高いでしょう。もし、副作用や肝臓への負担など、何らかの理由で服用に不安を感じるのであれば、必ず医師に相談してください。医師は、あなたの状態を専門的な視点から評価し、必要であれば、減薬や、安全な休薬期間の設定といった、医学的に正しい判断を下してくれます。薬のコントロールは、専門家である医師に委ねる。それが、安全な治療の大原則なのです。
危険な自己判断!「飲み忘れ」と医師の指示による「休薬」は全くの別物