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AGAとヘアサイクルの乱れの関係
男性型脱毛症(AGA)による抜け毛が増える根本的な原因は、「ヘアサイクル(毛周期)」の乱れにあります。健やかな髪を維持するためには、このヘアサイクルが正常に繰り返されることが不可欠です。AGAがどのようにヘアサイクルを乱し、抜け毛を引き起こすのか、そのメカニズムを理解しておきましょう。髪の毛一本一本には、それぞれ寿命があり、一定の周期で生え変わっています。この周期のことをヘアサイクルと呼び、大きく分けて3つの期間があります。「成長期」:髪の毛が活発に成長する期間です。毛根にある毛母細胞が分裂を繰り返し、髪が太く長く伸びていきます。通常、髪の毛の約85~90%がこの成長期にあり、その期間は2年から6年程度続きます。「退行期」:毛母細胞の分裂が停止し、髪の成長が止まる期間です。毛根が徐々に縮小し始めます。この期間は通常2~3週間程度で、全体の髪の約1%がこの状態にあるとされます。「休止期」:毛根が完全に活動を休止し、髪が抜け落ちる準備をしている期間です。毛穴の中では、次の新しい髪の毛(成長期毛)が育ち始めており、古い髪はこの新しい髪に押し出されるようにして自然に抜け落ちます。この期間は約3~4ヶ月続き、全体の髪の約10~15%がこの状態にあるとされます。健康な状態では、この「成長期→退行期→休止期→脱毛→新たな成長期」というサイクルが、それぞれの毛穴で規則正しく繰り返されています。しかし、AGAを発症すると、男性ホルモン(DHT)の影響によって、このヘアサイクル、特に最も重要な「成長期」が著しく短縮されてしまうのです。本来なら数年間続くはずの成長期が、数ヶ月から1年程度に短くなってしまいます。その結果、髪の毛は十分に太く長く成長することができず、細く短い「軟毛」の状態で退行期・休止期へと移行し、早く抜け落ちてしまいます。これが、AGAによる抜け毛に細く短い毛が増える理由です。そして、この短いサイクルが繰り返されることで、徐々に毛根自体も小さく(ミニチュア化)なり、最終的には髪が生えてこなくなってしまうのです。AGA治療薬(フィナステリド、デュタステリド、ミノキシジルなど)は、この乱れたヘアサイクルを正常な状態に戻すように働きかけることで、抜け毛を減らし、髪の成長をサポートするのです。
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ブラシで悪化?薄毛と摩擦ダメージ
毎日のブラッシングは、髪のもつれを解き、頭皮の血行を促すなど、適切な方法で行えばメリットがあります。しかし、やり方を間違えたり、ブラシの選択を誤ったりすると、「摩擦」によるダメージが蓄積し、薄毛を悪化させてしまう可能性があることをご存知でしょうか。特に髪が細く弱くなっている薄毛の方にとっては、ブラッシング時の摩擦は無視できない問題です。髪の毛の表面は、「キューティクル」という鱗状の組織で覆われています。キューティクルは、髪内部の水分やタンパク質を守り、外部からの刺激を防ぐバリアの役割を果たしています。しかし、ブラッシング時の摩擦によって、このキューティクルが剥がれたり、傷ついたりすることがあります。キューティクルが傷つくと、髪内部の水分や栄養分が流出しやすくなり、髪は乾燥してパサついたり、ツヤがなくなったりします。さらにダメージが進行すると、髪がもろくなり、切れ毛や枝毛の原因となります。切れ毛が増えれば、当然、髪全体のボリュームは減少し、薄毛がより目立つようになってしまいます。また、無理なブラッシングで髪を強く引っ張ってしまうと、毛根にも負担がかかり、健康な髪まで抜け落ちてしまう(牽引性脱毛)リスクもあります。頭皮への過度な摩擦も問題です。硬いブラシでゴシゴシと頭皮を擦るようなブラッシングは、頭皮を傷つけ、炎症を引き起こす可能性があります。頭皮環境が悪化すれば、健やかな髪の成長は妨げられます。では、摩擦ダメージを最小限に抑えるためにはどうすれば良いのでしょうか。まず、「ブラシ選び」が重要です。前述したように、静電気を起こしにくく、頭皮や髪へのあたりが優しい「天然毛」や「木製」のブラシ、あるいは「クッションブラシ」などを選びましょう。次に、「正しいブラッシング方法」を実践することです。毛先から優しくとかし、無理に引っ張らない。力を入れすぎない。濡れた髪でのブラッシングは極力避ける。これらの基本を守ることが大切です。さらに、ブラッシング前に「洗い流さないトリートメント」などを使用して、髪の滑りを良くしておくのも、摩擦を軽減するのに有効です。ブラッシングは、やり方次第で味方にも敵にもなります。摩擦ダメージのリスクを理解し、髪と頭皮を労わる優しいブラッシングを心がけることが、薄毛対策においても重要なポイントとなるのです。